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"み佛は、病という苦しみを縁(えにし)として、佛の子である私達それぞれの人生に、『道を求める』機会をお与え下されたのだ、と私は思うー。"

"それぞれの悟りー。"

 昔、もう何年も寝たきりであった或る方を思い、畳の上に横になり手も足も動かさずに、一時間を過ごしたことがある。
 それがたとえ僅かな時間であったとしても、動くのに動かずにいる辛さを通して、動きたくても動けずにいた彼(か)の人の、いつ終わるとも知れぬ時の長さに涙した。
 身に病を受ける人の苦しみ、そして、それを看る人の悲しみ。たとえどのような病であれ、病であることの現実が、かくも酷いものであろうとは、これは当事者だけが知る地獄であるー。
 一体、み佛は、どうしてそんな試練を私達にお与えになられるのか?どうせ限りある生命を生きているのだから、なんで死に至る最期の時まで健康で、楽に逝かせてくれないのかと、誰もが皆一様にそう嘆くけれど、本当に泣いておられたのはみ佛だったー。
 親(み佛)にとって、我が子(私達)の苦しみを見ること程、辛いことはない。けれどもみ佛は親故に、我が子に期待をかけられたのだ。
 病の人に、佛を見たことがありますか?
 み佛は、病という苦しみを縁(えにし)として、佛の子である私達それぞれの人生に、『道を求める』機会をお与え下されたのだ、と私は思う。
 私達の『菩提心(ぼだいしん)=実(まこと)の道を歩む志』の多くは、そんな苦しみを契機に起こした『求道心(ぐどうしん)』からだったと、私自身漸く気付いた今だからこそ、その御計らいに掌を合わす。たとえこの身は滅んでも、心だけは死なせてはならないと求道の縁を病に託して、私達それぞれがこの世に生まれた尊い意味を悟らねばならない時である。
 「悟りと云うものは、如何なる場合でも平気で死ねることと思っていたが、それは間違いで、如何なる場合でも平気で生きていられることであったー。」
 明治の俳人・正岡子規(まさおかしき)は、長い闘病生活の末、身動き叶わぬ病の床でこの言葉を残したという。
 全身を蝕む、まさに死ぬ程の痛みをおして、眼前の小さな景色を接点に、季節を全身全霊で感じながら生命の歌を詠み続けた彼は、動かぬ己が身をもって自身に与えられたこれが使命と、尚、“死なない生命”を悟ったのだ。
 菩提心を起こすことは、成佛に匹敵する。
 誰にでも必ず“それぞれの悟り”があるのである。
喜びも、悲しみさえも糧として、やらねばならないことがあるのであるー。
  平成24年1月18日 わかやま新報掲載

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このコラムは松本惠昌会長が和歌山新報『しんぽうサロン』に寄稿しているコラムの原稿の原本です。
著作権は松本惠昌会長にありますが、引用は大歓迎です。メールにてご一報ください。

No.2
 生命の重さ、感じますか。
 <不軽の行い>
No.4
 素直な心、忘れていませんか。
 <素直な心>
No.6
 羽ばたいて、みませんか。
 <十五の春に>
No.8
 ステキな毎日、いきていますか。
 <いかされる生命>
No.10
 『しあわせ』の意味、考えたことはありますか。
 <共感の心>
No.12
 生きている実感ありますか。
 <発展途上の人>
No.14
 心の鏡、みがいていますか。
 <手本の重み>
No.16
 世界を見る眼、育ててますか。
 <蜜柑の木>
No.18
 子どもに感謝してますか。
 <親子の絆>
No.20
 『いのち』の大切さ、教えてますか。
 <「いのち」の重さ>
No.22
 感動の涙、流してますか。
 <うれし泣き>
No.24
 悔いのない毎日を送っていますか。
 <今朝の別れ>
No.26
 胸は愛(かな)しくないですか。
 <愛しき一年>
No.28
 死と向かい合ったことがありますかー。
 <永遠の生命>
No.30
 あなたは「いじめ」をどう思いますかー。
 <生命の息吹>
No.32
 苦しいのは、あなただけですかー。
 <前向きに>
No.34
 生命の尊さ、感じてますかー。
 <無常を生きるー>
No.36
 "親心" がわかりますかー。
 <親心(おやごころ)ー>
No.38
 "泣き虫" ですか、"弱虫" ですか。
 <泣き虫と、弱虫ー>
No.40
 病の人に、「佛」をみたことがありますかー。
 < "祈りの言霊(ことだま)" >
No.42
 大切な人に遺したいもの、ありますかー。
 < "妹背(いもせ)ふたゝび・・・。"
No.44
 私たちの務めは何ですかー。
 < "祈りの御山"~「經王堂」の再建着始~
No.46
 未来へ、愛する人へ、引き継ぐものはありますかー。
 < "未来へ、そして愛する人へー"
No.48
 "求道の縁" を見落としてはいませんかー。
 < "それぞれの悟りー。"